恋に落ちた彼と彼女の話
翌日、午後7時
私は天文部の人達に混じって空を見上げていた。
彼は少し離れたところで天体望遠鏡をいじっている。
真剣な目だ。いつもそんな顔してれば女の子にモテるだろうに。
なんて思いながら横顔に見惚れていたら、急に彼が顔を上げてこちらを向いた。
「おい、何ぼけっとしてんだよ。早くこっち来い!!」
「あ、うん!」
私は急いで彼の方へ駆けて行った。
「月、綺麗だね。」
「あぁ、そうだな。」
会話はこれだけ。
でも、沈黙は苦じゃなかった。
隣に感じる彼の体温が暖かかった。
ふわふわと幸せな気分になっていた時
「ねぇ、これちょっと見てくれる?」
と誰かが彼に声をかけた。
顔を上げてそちらを見ると、とても綺麗な女の子がいた。
彼が立ち上がって、その女の子と何事かを話している。
お似合いだ。
そう思った。
整った顔立ちの彼と女の子は一緒にいるだけで絵になっている。
私なんかよりずっとずっと、その子は彼に似合ってる。
あ、彼が笑ってる。優しい笑顔だ。私には見せたことないような。
あーあ、馬鹿だな、私。
なんでこんなことで泣きそうになってんだろ。