恋に落ちた彼と彼女の話
「……私、帰るね。」
女の子との会話を終えた彼にそれだけ言って歩き出した。
「は?おい、ちょっと待て!!」
すぐに腕を掴まれる。
「っ、離して。」
「お前、何怒ってんだよ。」
彼に怒ってる訳じゃない、あの子に嫉妬してる自分がいやなんだ。
「いいから落ち着け。ここ座れ。」
暫く暴れた後、無理矢理彼の隣に座らされた。
「とりあえず話せ。何で帰ろうとした。」
う……。い、言わなくちゃいけないのか?
「………から。」
「あ?」
「あの子が綺麗だったから!あんまりあんたにお似合いだったから!!」
言ってから急に恥ずかしくなって顔を伏せた。
「はぁ…そんなことかよ。」
そ…そんなことだと!?
「いいか?よく聞けよ?
俺は、お前が好きだ。」
………へ??
「さっきのあいつより、どんな美人より、俺はお前が好きだ。」
驚いて顔を上げると、赤く染まった彼の顔が見えた。
彼の目はまっすぐ私を見ていた。
「ほんと、に?」
「嘘なんかつくかよバーカ」
あぁだめだ。また泣きそうになってきた。
私はこっそり目の縁の涙を拭って、照れ隠しに彼に一言だけ言い返した。
「恥ずかしいこと言ってんじゃないよバーカ」
end.
→夢中