恋に落ちた彼と彼女の話
その気持ちに気づくまで
01 彼女の場合
「おい、帰るぞ。」
そう声をかけられて、初めて自分が眠っていたことに気がついた。
ぱっ、と窓の外を見ると、目に入ったのは明かりの消えたむかいの校舎。
あぁ、今日も話かけられなかったと少しだけ残念な気持ちになった。
「おいコラ、いつまでも寝ぼけてんじゃねぇよ。」
幼なじみの彼がガン、と鞄で私の頭をたたく。
なんだか悔しくなった私は、頭をさすって拗ねた顔を作りながら振り返った。
「寝ぼけてなんかいませんー。…ね、駅前のさ、ファミレスの新作パフェ食べたい。」
そう言うと、彼は大きくため息を吐いて
やれやれと首を横に振りながら
「…わかったから、早く荷物まとめろ。」
と言った。
やった!
心の中で小さくガッツポーズをしてから、私は机の横の鞄を手に取った。
→02 幼なじみの場合