恋に落ちた彼と彼女の話
その気持ちに気づくまで

01 彼女の場合


「おい、帰るぞ。」

そう声をかけられて、初めて自分が眠っていたことに気がついた。
ぱっ、と窓の外を見ると、目に入ったのは明かりの消えたむかいの校舎。

あぁ、今日も話かけられなかったと少しだけ残念な気持ちになった。

「おいコラ、いつまでも寝ぼけてんじゃねぇよ。」
幼なじみの彼がガン、と鞄で私の頭をたたく。

なんだか悔しくなった私は、頭をさすって拗ねた顔を作りながら振り返った。

「寝ぼけてなんかいませんー。…ね、駅前のさ、ファミレスの新作パフェ食べたい。」

そう言うと、彼は大きくため息を吐いて
やれやれと首を横に振りながら
「…わかったから、早く荷物まとめろ。」
と言った。

やった!
心の中で小さくガッツポーズをしてから、私は机の横の鞄を手に取った。


→02 幼なじみの場合


< 5 / 13 >

この作品をシェア

pagetop