本気になっちゃいけない

部屋に入るとベッドとテレビしかないワンルーム

ワンルームと言ったって20畳はあろうかという広さ

青山でこの広さ
さすが医者だと思いながら
ベッドまで連れていった

キョロキョロしながら
キッチンから水をもってきた

私が ベッドに横になっている彼にコップを手渡そうとすると

いきなりその手を引き寄せられ

「えっ?」
ドキッとした

「やだ 先生こぼれます」

「帰るなよ」

「えっ?」

起き上がった彼は受け取ったコップを床に置き

ベッドに腰かけた

そして向かい合わせで立っている私を強引に抱き寄せキスをした

お酒臭い
でもそれよりも甘いそのキスにボーッとしてしまった私

耳元で
「帰るなよ」
その声に一層ドキドキして
胸の鼓動がまた早くなった

きっと何処かでこうなることを私も望んでいたのかもしれない


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