今日から始める魔王伝
「もう殺してとか言わないで下さいよユウさん」
「おう分かった。
ミーナに泣き付かれても困るからな」
俺は机に突き立てたククリナイフを鞘に収め棚に仕舞う。
「でミーナはどう思ってるんだ?
俺は……俺はあの闘いは間違いだったと確信している」
「間違って何でですか? 」
ミーナは椅子に座り直し俺に問い掛ける。
コーヒーを一口飲み俺は言う。
「ミーナの父、魔王は正しかった。
俺達は一方的な主張をして魔王の主張に耳も貸さなかった」
ミーナは悲痛な顔をして話を聞いている。
「現にあれから魔物が人を襲う事が急増している。
それに……」
俺は一瞬目を伏せミーナに言う。
「小さい時のお前に辛い記憶を造ってしまったからな」
「それは……」
「今まで言えなかったけど本当にすまなかった」
俺は机に頭を付け謝る。
「ユウさん頭を挙げてください。
もう私は吹っ切れましたから」
ミーナが哀しげな笑みを浮かべる。
――吹っ切れたならなんでそんなに哀しそうな顔をするんだよ……
俺は爪が食い込む程強く手を握りしめる。
「ユウさん、もしまだ責任を感じてるなら私の世界征服を手伝って下さい」
「えっ? 」
「私はお父さんを越えたいんです!
完璧に魔物を統制してお父さんが望んだ魔物と人々との共生する世界を……
争いの無い世界を作りたいんです!! 」
俺の両手を握りミーナは言う。
「ユウさんの命私に預けてください!
世界を征服するまで……。
死ぬまで私と一緒に居てください!! 」