今日から始める魔王伝
※ ※ ※
「うしっ、これで良いな」
俺は鞄に積めたものを再確認する。
「ユウさん用意できましたか? 」
「じゃあ行きましょう」
ミーナの後を追い俺は家の外に出る。
俺は世界征服を目論むミーナの手伝いを本格的に引き受けた。
なのでここではなくミーナの家、つまり魔王城に住むことになったのだ。
「流石にここで転移魔法を使ったらダメですよね? 」
「ダメに決まってるだろ!
街の外に出るまでは歩きな」
「うぅ~。分かりました」
嫌々ながらもミーナは俺に従ってくれる。
こんな街中で転移魔法なんて高位な魔法を使ったらパニックを引き起こしてしまう。
「あっそうだ。
ミーナ少し待っててくれ」
俺はミーナそう言い返事も聞かずに歩き出した。
俺はこの街に流れ着いてから1番お世話になった隣の家、サーシャの家に最後の挨拶をしようと扉をノックする。
「はいどちら様ですか? 」
鈴のような耳当たりの良い声と共にサーシャが扉から顔を覗かせる。
「よっ」
「私に変態の知り合いなんて居ません」
軽く手を挙げ挨拶する俺を一目みて、サーシャは玄関をバタンッと閉めた。
――これは結構精神的に泣きたく成るな……
俺は一昨日のミーナの気持ちが少し分かった。