今日から始める魔王伝

「サーシャ! お客様になんて態度をとるんですか! 」

「で、でも……」

「言い訳は聞きません。後でお仕置きですからね! 」

――ざまぁみろ。

俺はサーシャが母親に叱られる声を聞いてスッキリする。


「どちら様ですかってユウ君じゃない?
今日はどうしたの? 」

「おばさんこんにちは。
実はですね、俺もう一度旅に出ようと思いまして。
5年間お世話になったおばさん達にお別れを言いに来ました」

「えっ! ユウ君旅に出るの?
またここには帰ってくるのよね? 」

俺はおばさんから少し目を反らし言う。


「旅の目的を果たしたら帰ってきます。
けど帰って来れるかは微妙ですね」

「あら、それは残念ね……
家のサーシャもユウ君の事大好きなのに」

「べ、別にそんな変態好きじゃないわよ!! 」

おばさんと話していると奥からサーシャが叫んでいた。


「ごめんなさいね。
あの子素直に成れないだけなのよ。
嫌わないであげてね」

「いえ分かってますよ。
俺もサーシャの事妹の様で好きですから」

「……『妹の様で』ねぇ。
……サーシャも苦労するわ」

笑顔で俺が言うとおばさんは何かを呟いた。

そんなおばさんを見ながら俺は切り出す。


「じゃあ俺は行きます」

「気をつけてね。
あと疲れたり行き詰まったら帰ってきなさいよ。
ここはあなたの故郷なんだから」

「――っ!? はいっ!
じゃあさよなら」


「待ってユウ兄!! 」

俺が背を向け歩き出すとサーシャに呼び止められた。


「ユウ兄は何処に向かうの? 」

俺は振り返り笑顔で言った。



「魔王城だ!! 」



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