今日から始める魔王伝
――シアは黙ってれば可愛いのにな。
そんな事を考え歩き出すと袖を引かれた。
「ユウ待ってよ」
「なんだよ? 」
シアの方に顔だけ向ける形で振り返る。
「もう一度!! もう一度だけ私と一緒に」
「シア…言ったろ。
俺はもう闘いたくない……」
俺にすがり付くシアに諭す様に言う。
「でも…ムグッ!? 」
パンをシアの口に突っ込み黙らせる。
「じゃあな」
片手を上げ、俺は今度こそ本当に家に向かって歩き出した。
「ユウはまだ魔王を倒した時の事を気にしてるんだね……」
シアが哀しげに呟いた言葉は俺には届かなかった。
※ ※ ※
「んあぁ~」
自分の家に付き、俺は寛いでいた。
魚屋のおっちゃんに押しきられて買ってしまった魚をツマミに酒を呑んでいる。
ふと脳裏に色々な記憶がめぐる。
『頼む…魔王を、魔王を倒してくれ』
『な、何故だ…我はただ……
ただ人々の為に…』
『人を傷付けるだけの存在の考えなんてな! 』
『どうして魔王が倒されたのに魔物が襲ってくるんだ!? 』
『我は人々の為に魔物を統制していただけだっ!! 』
様々な記憶の中で一番強い衝撃の強い記憶が流れた。
『お兄さん達の誰?
あれ? お父さん? なんで眠ってるの……
えっ…そんな……
嫌ゃゃゃや――!! 』