今日から始める魔王伝
「――はっ! 」
酒を呑みながら寝てしまったらしい。
外は暗くなり、窓から控えめな月光が射し込んで居る。
俺は蝋燭に火を灯した。
ボーと月を眺めながら酒を呑んでいると、微かに玄関を叩く音がする。
不審に思いながらも俺は玄関に向かう。
「こんな時間に一体誰だよ? 」
俺は文句を言いながら扉を開けた。
「わっ! ビックリした!
あ、あの始めまして私は『バタンッ』って閉めないで下さいよぉ!! 」
玄関の外には1人の美少女が立っていた。
そこまでは良い。
いや、真夜中に美少女が家に訪ねてきたという事は異常だが今は置いておこう。
そんな事よりももっと大切な事があった。
俺はその少女に見覚えが有るのだ。
人類では有り得ない青みがかった肌、新雪の様に耀く白銀の髪。
そして人形の様な美貌に深紅の瞳。
明らかに魔王の娘だった。
――俺酔ってるのか?
もう一度玄関を開いた。
「あっ! 酷いじゃないですか!?
いきなり玄関を閉めるなんて。
せめて話を聞いてく『バタンッ』ってまたですかぁ――!? 」
――うん。
完璧に無く魔王の娘だな。
…。
……。
………。
「って! 嘘ぉぉお―――!? 」
夜中だという事を忘れ、俺は驚きの叫び声を上げた。