今日から始める魔王伝
――えっ! マジで何しに来たんだ?
もしかして仇討ちとか?
確かに彼女の父親(魔王)を倒したパーティーに所属してたけど俺は不甲斐ないシーフだぞ!!
俺は混乱の極みに達していた。
しばらくあたふたしていると、玄関の向こうから啜り泣く声が聴こえる。
俺は気になりそ~っと玄関を開けた。
「グスッ。酷いです……
もう一度会いたくてせっかく5年かけてグスッ見つけ出したのに話グスッも聞いてくれ無いなんて酷グスッいです……」
玄関の前には落ち込んで地面にしゃがみこむ魔王の娘が居た。
指で『の』の字を書く姿はなんとも言えず哀しい。
なんか話を聞いて欲しいと泣いているので、話し掛けてもいきなり危害を加えられる事は無いだろう。
――無いよね?
若干ビビりながらも俺は魔王の娘に話し掛けた。
「おい、話聞いてやるから泣くなよな」
「ふぇっ? 」
しゃがみこんでいた魔王の娘(以下娘)が俺を見上げる。
「ふぁっあ!? 」
俺に見られている事に気が付き、慌てて立ち上がる。
俺は立ち上がったのを確認して再度話しかける。
「で? 話って何」
「はっ!? そうでした」
俺の質問で正気に戻った娘が、急に襲い掛かってきた。
いきなりの事で俺は対応出来ず押し倒されてしまった。
――あっ、俺死んだわ……
俺が死を覚悟していると、娘が俺の上で急に叫ぶ。
「お願いですっ!
世界の半分を上げますから世界征服を手伝ってください!! 」