春色恋色
その声の主は私の大好きな人だった。
「せっ、せんせ…!」
パッと顔を逸らしてしまった。
うわぁ、露骨に逸らしちゃったよぅ…
「大丈夫か?熱は?」
先生は少し私に近づいて、顔を覗きこんだ。
その様子に唯はニヤニヤしてばっかり。
早河先生は腕組みをしながらこっちを見てる。
「やっ、あのっ!大丈夫ですからっ…!」
なんか敬語になっちゃった!!
動揺してるのバレバレじゃん!!!
先生も不思議そうな顔してるよぉ~
チラッとみた顔はすごく心配そうな顔だった。
やっぱり生徒のことを真剣に心配してくれるんだ…
「でも、顔赤いけど…」
そんな言葉とともに先生の手が私の頬に触れた。
その瞬間にピクッと反応してしまった。
「だ…ダイジョブ…ですから、」
硬直している私に助け舟を出してくれたのは
やっぱり、唯だった。
「私が見てるから大丈夫だよ!」
ね、と言って私に同意を求める。
躊躇うことなく、すぐに頷いた。
「そうかぁ?
じゃ、なんかあったらすぐ言えよ?」
そう言いながら、頬から手を離した。
「直人は優しいなぁ」
早河先生が口を開いた。
先生のこと、直人って言ってるんだ…
「ちょ、先生!
学校で直人はやめましょうよ」
「おぉ、わりぃ」
その後の先生たちの話によると、
二人は高校時代からの先輩、後輩らしい。
そして先生は私が大丈夫なことを確認すると、
教頭先生に呼び出しをされ、どこかへ行ってしまった。
早河先生は唯としばらく話してから、
入学式の準備とかなんとかで職員室に戻っていった。