春色恋色
桜の木
そしてその後、入学式は淡々と進められていき、あっという間に放課後となった。
「う~!やっと終わったぁー!!」
玄関から出ると、隣で唯が叫んだ。
「終わったって…寝てたじゃん」
唯は一番前の列なのに、入学式の間ずっと寝てたのだ。
そして先生たちも何も言わないという…。
「やだなぁ~、寝てる訳ないじゃん?」
可愛らしい笑顔をこちらに向けた。
「琴葉は…、今日も帰らないの?」
「ちょ…!変な言い掛かりはやめてよ!
ちゃんと帰ってるよ!
帰るのが遅いだけで……」
私が訂正すると舌を出してごめん、と謝った。
「私、今から亮介とデートなんだ!!」
「あ、そうなの?
じゃあ早く行かないと!!
楽しんできてね!!」
唯に手を振りながら言った。
唯は嬉しそうに顔を赤らめながら手を振って走っていった。
唯には去年の夏頃から付き合っている
影近亮介という彼氏がいる。
二人は学校公認のラブラブカップルなんだ。
普段はクールな亮介だけど、唯の前になると
別人かと思うほど照れまくって顔を赤くするんだ。
可愛い二人なんだよね…
そのとき、ふと中庭の桜の木を思い出した。
今年も綺麗に咲いているだろうか。
少し先生に会えるかも…と期待しながら中庭へ向かった。