春色恋色



フタを開けるとプシュッという
炭酸が抜ける音が聞こえた。


飲む直前に先生は私をジーッと見ていた。


「な、何?」


私が言うと、ニヤッと笑って目を逸らした。



不思議に思ったがあまり気にせずにいた。

そして口に入れた瞬間、
先生が私を見ていた理由が解かった。



「この味って…、飴と…」



先生の方を向くと口角を上げて笑っていた。



「やっぱり気付いてくれた」


そう言うと嬉しそうに自分の分を美味しそうに飲んだ。







その炭酸飲料は先生がくれた飴と同じ味をしていた。

グレープフツーツ味。



「気付かなかったらどうした?」

先生の方を向かずに聞いた。

だけど少し間があったから、チラッと見ると
すごく優しく微笑んで私を見ていた。




「気付いてくれるって思ってたから」





そう言ったあともずっと微笑んでいた。








その笑顔に私は、



お兄ちゃんを思い出した。


まだ優しかった頃のお兄ちゃん。






私がお兄ちゃんのあとをずっとついて回っていた頃

道端で転んで泣いている私にこんな風に


優しく笑いかけてくれていたんだ。




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