春色恋色
「琴葉…?」
涙を必死に堪えようと下を向く私に不思議そうに尋ねてきた。
「ごめん。帰る…」
また泣いてるところを見せたくなかったから
「帰る」なんて言ったのに
先生は全然解かってない。
「じゃぁ、送るよ。
もう暗いし。な?」
車の鍵を出しながら、すごい爽やかな笑顔で返してくる。
ホントに解かってない…。
泣いてるところ見られたくないんだって!!
「い、いいよ!!
ホラ!車って教師と生徒だし!!」
断ろうとして咄嗟に言ったことだったけど、墓穴掘っちゃった…。
教師と生徒って自分で言っちゃったよ…。
うわ~、すごいショック…
「じゃ、歩いていこうか」
落ち込んでる私をよそにまた爽やかに返してくる。
ダメだ、この人…。
今ので涙も引いちゃったし…。
「ホラ、行くぞ」
そう言って私の前に立って手を差し出した。