春色恋色
「私…ずっと知らないフリしてたの。
だけど、そうするともっと辛い。
誰も助けてあげられない…」
その時先生が私を自分の方へ引き寄せた。
「ごめん。
もっと早く気付いてれば良かった。
辛かったな」
私の頭を撫でながら言った。
「先生は気付いてくれたじゃん…。
嬉しかった…よ」
声を上げながら泣いた。
先生は黙って抱きしめてくれている。
なんでこんなに優しいの?
優しくしないでよ…。
その優しさに甘えちゃうから…。
「ごめん。落ち着いたから」
これ以上迷惑掛けたくなかったから先生から離れた。
「聞いてくれてありがと。
ここから一人で帰れるから。
ありがとね」
先生と居たらもっと泣きそうだから立ち上がって帰ろうとした。
「ちょ、待って。俺の番号教える。
何かあったら電話して来い」
先生は自分の電話番号を私の携帯に登録した。
「わかったか?」
先生の言葉に小さく頷いた。
「…あ、りがと…う」
声が上手く出なかった。
先生…、ホントにありがと。
「気をつけて帰れよ!」
また頷くと逃げるようにしてその場を立ち去ってしまった。
その日の夜。
私は部屋でまた泣いてしまった。
先生の優しさが嬉しくて。
私、先生を好きになって良かったよ…。
先生みたいな優しい人に出会えて本当に良かったよ。