春色恋色
 
 新入生の間を通ってやっと校舎に入った。

 
 私は本当に
”桜井直人”が好きなんだって実感した。

だって、こんな人が居る中で先生を見つけたんだもん。

 先生は一年前と同じスーツを着ていた。
そして通り過ぎる新入生、ひとりひとりに

「おめでとう」
「おはよう」

って声を掛けている。

 やっぱり、変わらないなぁ

 そう思いながら、てけてけと先生の方へと歩いていった。


 「おう!琴葉!元気にしてたかぁ?」

 私の頭をくしゃっと撫でた。
先生は私を ”琴葉” と呼ぶ。

「先生は?」

 質問に眉を下げて笑う。

「俺の質問の答えになってないだろぉ?」

 スーツのポケットに手を入れて、くくっと笑う横顔を見つめていた。
 
 だって、自分のことより先生の方が大切だもん。
 先生が元気だったら私も元気になる。

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