春色恋色

 「そういえばさ、一年前に桜の下で話したな」

 横を向いていた顔をくるっとこちらに向けた。
その目はくりくりしてて、先生とは思えないような顔だった。

 そして突然、何かを思い立ったような表情をして
ポケットの中をゴソゴソとし始めた。

「あ、あった」

 そう言うと、自分の手を私の目の前に突き出した。

「え…、何?」

「いいから、手ぇ出せよ!!」

 私は言われるがままに手を出した。

「はい、プレゼント」

 その言葉と同時に掌の上に何かが置かれた。
見てみると、あの時の飴だった。

 勢いよく顔を上げて先生の顔を見ると
ニヤっと笑った。

「他の奴らには秘密な?」

 それだけ言うと私の横を通って体育館の方に行ってしまった。

 

 ヤバイ…超嬉しいんですけど…



 その後私は、覚束無い足取りで教室へと向かった。
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