ひねもす月
考えてみれば、ダイチとは同い年の従兄弟同士だ。どこか、似たところがあったのかもしれない。
性格はまったく違ったはずだけれど、何かを連想させる部分が、きっと、一つくらい。

………………で、なければ。ミナにとっては単に、この家に暮らす男、イコール、ダイチ、なのだろう。


--この子はね、何もしゃべらない。何も感じないのかもしれないねぇ。体は生きてるのに、心は死んでしまったんだ。不憫な子だよ。


常々そうこぼしていた祖母は、あの瞬間、ミナの変貌ぶりに目を見張っていた。


--……神様……あぁ……ありがとうございます……!!


たった一言だけれど、ミナがしゃべった。
愛らしいだけの人形のようだったミナが。

毎日同じことを繰り返すだけだったのに、カナタを追いかけ、外を歩き、笑い、時には泣いている。


奇跡、だ。


「……あ、これは父さんと母さんだね。ばあちゃんも」


スケッチブックの端、魚のきょうだいから少し離れた所。やはり似たような色をした、大きめの三匹を見つけた。


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