ひねもす月
「これでよし、と」


できるだけ直視しないようにしながら、とりあえず近くの落ち葉を上からかける。
埋めたとは言い難いけれど、晒されたままよりはいいだろう。
スコップも何も持ち合わせのない今、手で土を掘るのはどうにも気が進まないし。これが自分たちにできる最善の策に思えた。


「あ。それより、昨日の仕掛けを見に行かなきゃ」


元々この林に来た目的はそれだった。

昨日の夕方、二人は、カブトムシやクワガタを捕まえるための仕掛けを作り、あちこちの木に吊るしてまわっていた。
……とは言っても、カナタがインターネットで仕入れたばかりの知識だから、所詮は付け焼き刃。
一つ目の罠は羽虫がこびりついているだけだった。

今度こそ。

思った矢先の出来事だ。


「あ、こら、ミナ!」


またしてもミナが駆け出した。
仕掛けた場所はそっちじゃない。

今度は何を見つけたのやら。

苦笑いを浮かべながら、後を追う。


「どれ?」


ここ、ここ!と、ばかりにしきりに差し示すのは、一本の木の幹。
ミナが、捕まえようとそっと手を伸ばす先。


「だめ!!」


咄嗟に大声が出た。

細い肩がビクンと強張る。


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