ひねもす月
3 二藍 さまよう想い
久々の遠出を思い立ったのは、テレビを見ていたミナが、画面に映る水族館に大興奮していたからだった。
バスを乗り継いで、県下一の街に出る。
ミナを連れ出すことは少なからず不安だったものの……地方の、さほど大きくない街だ。
しかも目的地は中心部から少し離れた大型ショッピングセンター。
なんとかなるだろう。
本当は水族館に連れて行ってあげたい。けれど、それはさすがに遠すぎた。
あの田舎町からほとんど出たことのないミナを連れて日帰りするには、お互いに負担が大き過ぎる。
パァァァッ
鳴り響くクラクションに、ミナがびくりと体を震わす。
バスを降りてから、ドキドキしっぱなしなのだろう。
キョロキョロと街並みに興味を示しているものの、カナタの手を放そうとはしない。
やっぱり、無理だったかな。
浮かんでくるそんな思いを打ち消しながらカナタは歩いた。
カナタにとっても馴染みのある街ではないが、事前に調べた限りでは、目指す場所はすぐそこのはずだ。