ひねもす月
今日は初めてのことだらけだ。

下手したら明日あたり知恵熱でも出すかもしれないな。
カナタは漠然と思った。

申し訳ないけれど、そうなったらちゃんと看病するとしよう。
ここまで来たら、進むしかない。


「足元見て。大丈夫、一緒だから」


せぇの。
かけ声をかけると、躓きそうになりながらも、ピョンと降りた。

目的地を理解しているのかどうかは怪しいが、店に入ってからのミナの足取りは軽い。


「あ、あったあった」


たどり着いたのは、ペットショップ。


「えっと……」


人が多いあたりはきっと、子犬や子猫がいるのだろう。

迷路のようなペットフード売り場を抜けながら、興奮する子どもの声の聞こえない方へと向かって歩く。

目指す場所は……大抵、一番端にあるものだ。


「わぁ!」


興味深そうにあちこちを見回していたミナが、ふいに歓声をあげた。

パッと手を離して、駆けていく。

どうやら、彼女の方が先に気づいたらしい。


「結構いるでしょ?
……へぇ、金魚だけでもこんなに種類いるんだ」


整然と何列もにわたり、上下3段に並べられた、値札つきの水槽。



< 36 / 83 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop