ひねもす月
一体、どんな顔をしているというのだろう。

この場に鏡がなくて良かったと、心底思う。


「間抜けなんだか険しいんだかわかんねぇ」


沢井くんはなおも笑う。
でも、その話題自体は忘れていないらしかった。


「で、どうなん?」


「……どうって…………」


なんでこんなこと訊かれるはめになってしまったのか。
興味津々な二人の顔に、頭痛がしてきた。


「……いとこはいとこだよ……一緒に住んでるし……兄妹みたいっていうか……」


歯切れの悪い自分に、苛立ちがつのる。

こんな時に、ミナの大人びた笑顔を思い出すなんて。
腕の中の柔らかさを思い出すなんて。


「マジ!?」


顔を輝かせたのは、阿部くん。


「んじゃ、オレが狙っても問題ねぇじゃんっ」


「え……いや……」


「だっておまえら何もねぇんだろ?」


「そうだけど……」


確かに、そんな間柄じゃあない。
カナタにとって、ミナはすごく大切で、かわいくて……恋愛なんかとは到底、一緒にできなくて……。

恋愛の対象として見ることも、そんな感情を抱くことも、似つかわしくない。


なのに、どうしてだろう。


落ち着かない。

胸が苦しい。



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