ひねもす月
……誰、これ。


ふと見ると、姿見の中には、見慣れない誰か。

一丁前に格好つけて、どんことでもこなせそうなスマートな、男。


知らない。こんなヤツ……。


「さ、戻るか」


いつの間に支払いを済ませたのか、阿部くんがヒラヒラと手をふり、沢井くんがビニールの袋をカナタに差し出す。
中身を覗けば、元々着ていた服がたたまれて入っていた。


「携帯はどうせ気づかねぇよ。ま、アイツらがいる場所なんて限られてるし。適当にいきゃ、会うだろ」


ミナのところに戻れるとなって、ようやく、思考回路が動き出した。

行くって言ったって……。


「ん?せっかくの出来、見せなくてどうするよ。
っても、これ系の店じゃたかが知れてるけどな」


「それが逆に腕の見せどころってヤツ?安物を良く見せる。これぞ、プロ」


服装と代金を気にし始めたカナタの先回りをして、二人がニンマリ笑った。


「オレらの趣味の押し売りだからさ。こういう時は気にすんな」


ミナはいざしらず、カナタは着せ替え人形よろしく遊ばれるだけだと思っていたから、買ったと知ってつい、動揺してしまう。



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