ひねもす月
かわいいを連呼する声も、同意を求める声も、どこか遠いところから聞こえてくるようだ。

そんなことより……。


目が、離せない。


そこにいるのは、れっきとした、10代の少女で。
胸元に、腰に、脚に、色香が漂っている。


こんなの…………。


見たくない。

なのに、吸いつけられる。
白い肌の魔力にも等しい引力が……。


心が、絡め捕られていく。
いや、今までだって捕らわれてはいたのだけれど……。


今まで感じたことのない疼きに、カナタは奥歯をかたく噛み締めた。


「おにいちゃん!」


不安げにあたりを見回していたミナの視線がカナタにとまり、パッと大輪の花が咲くように華やいだ。


「ね~?超かわいいでしょ?モデル顔負け。アタシたちに任せて大正解だよ」


コツコツとヒールを鳴らしてカナタの前までくると、ミナはいつものように小首をかしげた。
さらりと一筋の髪が流れるその動作にさえ、胸が高鳴る。
見慣れているはずなのに、今はその行動の一つ一つが鮮烈な熱を放っているように感じられた。

直視、できない。


「おにいちゃん。
……か、わい、い?」


確かに、ミナの唇が動き、そう言葉を紡いだ。



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