ひねもす月
自分に言い聞かせるように、何度も強く、心の中で繰り返す。
「おにいちゃん?」
この立場こそが、カナタの生きる意味だから。
失ったら、何もないから。
「眠そうだね。寝てもいいよ。起こしてあげる」
トロンとまぶたをおろした横顔が愛しい。
カナタは優しい気持ちで、それを見た。
そうだ。
これでいい。
白いほっぺがほんのり赤いのは、やはり熱を出す予兆なのか。
眠り姫みたいだ。
ぼんやり思う。
本当のミナはもしかしたら、まだ彼女の奥底で眠っているのかもしれない。
何かの弾みで、目覚める時も来るだろう。
その時には、きっと、この時間こそ夢になってしまう。
でも。
窓の外を流れる、暮れ始めた空を見やりながら、カナタは深く深く、息をついた。
バスの振動が疲れた体に心地良く、眠気を誘う。
肩には、安心しきったミナの頭。
顔にかかる邪魔な髪をよけてやりながら、カナタも一つ、欠伸をした。
--今は……このまま………………。
「おにいちゃん?」
この立場こそが、カナタの生きる意味だから。
失ったら、何もないから。
「眠そうだね。寝てもいいよ。起こしてあげる」
トロンとまぶたをおろした横顔が愛しい。
カナタは優しい気持ちで、それを見た。
そうだ。
これでいい。
白いほっぺがほんのり赤いのは、やはり熱を出す予兆なのか。
眠り姫みたいだ。
ぼんやり思う。
本当のミナはもしかしたら、まだ彼女の奥底で眠っているのかもしれない。
何かの弾みで、目覚める時も来るだろう。
その時には、きっと、この時間こそ夢になってしまう。
でも。
窓の外を流れる、暮れ始めた空を見やりながら、カナタは深く深く、息をついた。
バスの振動が疲れた体に心地良く、眠気を誘う。
肩には、安心しきったミナの頭。
顔にかかる邪魔な髪をよけてやりながら、カナタも一つ、欠伸をした。
--今は……このまま………………。