ひねもす月
ガシャ


いつかの小さな浜に着くと、平らな大きめの石を目掛けて勢いよく腰をおろす。
近くの小石がうるさく鳴った。

心を満たすのは、不満。

考えつくのは、母の悪口。


突然やって来て何を言うかと思えば。

連れて帰る?

手に負えなくなって、捨てたくせに。


いつだって勝手なことばかり……。

なぜカナタが学校に行けなくなったか、なんて、知ろうともせずに。
なぜカナタがリビングにいられなくなったか、なんて、考えてもみないで。


母親だからって、それほどまでに偉いのだろうか。

あんな、ヤツ。

来なければ、幸せなのに。
放っておいてくれさえすれば、立派な、ミナのおにいちゃんでいられるのに。


--ミナ、の……。


ぐしゃりと髪に手をつっこんで、掴める限りの毛を引っ張った。
抜けるなら、抜ければいい。
頭皮の痛みが、正気を保つ。
この痛みが、最低な自分を罰してくれる。
……ちょっとは、気持ちが、ラクになる。


「あぁ、もうっ!!」


遠く、湖面に当たり散らした。


ミナには……あんな姿、見せたくなかった。

最悪だ。


きっと怯えているだろう。
泣いているかもしれない。


クズみたいな自分のせいで。


< 62 / 83 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop