ひねもす月
「おにいちゃん!!」


ガサッと草が揺れた。

かと思うと、


「ミナ!?」


飛び出してくる白い影。


「なっ……!?」


どんっ

強い衝撃に驚けば、抱きつく重みに絶句する。

それは確かに。


「ミナ!?なんで!?」


しがみつくミナを引き剥がそうとするものの、どうしたことか、すごい力で離れない。

それでも、白いふんわりとしたワンピースのすそが汚れてしまうのが気になって、カナタは華奢な肩を引っ張った。


頭の中の混乱は悪化するばかり。


「ちょ……ミナ、離して」


「や!!」


びっくりするほど明確な拒否。

ぐるりとまわした腕にさらに力がこめられた。

どこにこれほどの力があったのだろう。
肺が押し縮められて苦しいくらいだ。


「……ミナ?」


「や!!」


カナタの胸に押し付けられたその表情は、見えない。
でも。

……泣いて、る?


よくわからないままに、抵抗することを諦め、カナタはミナの頭を撫でた。

白いスカートは気がかりだけれど、岩場に座った足は、ちょうどそれで保護されているようだ。
ならばいい、と思うことにして、体に入れていた力を抜く。


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