ひねもす月

カナタは、そっと顔をずらし、ミナを正面に見た。
息がかかるほど近い距離にいるのに、こうしていると、ミナと自分が別の存在であることを痛感して苦しい。

一つに溶け合えればイイのに。
離れることなんか、ないように。
考えずとも、その苦しみが分かるように。


ふ……っ、と--。


ミナの顔に影がかかった。


きっと、もうすぐカナタなんて忘れてしまうから…………。


柔らかく、そして甘く。


カナタの唇が、ミナのそれにふわりと触れた。


始めは微かに。

次第に、はっきり。


せめて、想いがミナに届くように。
ミナの心に溶け込むように--。

深く、奥まで……。


優しい口付けは、どのくらい続いたのだろうか。


されるがままにしていたミナが、ふいに動いた。


そっと片手をあげると、カナタの頬に静かに触れる。

拭うような動作に唇を離せば、ミナは穏やかな表情でこちらを見ていた。


「だ……お、ぶ」


大丈夫。


密やかに流れる涙を拭い、ミナは澄んだ瞳でカナタを見つめる。


自分が泣いているなんて……思ってもみなくて、カナタは急に恥ずかしくなった。

泣いて……それどころか、突然ミナにキスするなんて。


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