ひねもす月
--ミナの近くで、ミナを守る。


1年にも満たない昔、決めたこと。
その決意は揺るぎなく。
今もカナタの根底にある。


離れていたぶん、より強まった、カナタの想い。

でも……。


結局、激しく傷つけた。

言葉を失った姿に、思わずにはいられない。


けじめを…………つけて来たかった。

身代わりの兄なんかじゃなくて。
カナタ自身の人生として。


自己満足、なのかもしれない。

偽りなくずっと一緒にいたくて……それ故、酷くミナを傷つけた。


勉強の合間に考え続けた、二人の関係。


もしもう一度兄として迎えられたら。

そしたらカナタは、ダイチになると決めていた。
ダイチみたいに……なんかじゃなくて。一生を、ミナの本当の兄として。
すぐ近くで守って生きる。


そうで、なければ……。


「上手にできたね。
じゃあ、向こうに戻ろ」


仏壇の上でニカッと笑う、幼い遺影。
見る度、胸がざわりと騒ぐ。

ミナは顔をあげると、そそくさと立ち上がり、自分の部屋へと戻って行った。
スイカはもう、十分らしい。


ミナに触れたい。
頭を、撫でたい。


飢えを超え。
細胞の一つ一つが渇望している。


でも、今のカナタに、それはできない。


触れてしまえば、苦しいほどの想いが堰を切って溢れ出すから。

ミナが何を思おうが、カナタの思い通りにしたくなる。


もし……あのまま一緒に居たら……きっと、半端な理性は何もかもを抑えきれずに……。

自分を見てもらえぬ切なさに負け……そしてきっと……。


あの空白は必要だった。
冷静に、考え直すためにも。


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