ひねもす月
そんなこと、ありえない。

否定する弱気な想いと、確信する、強い想い。


--ならば、これは……。


まあるく白い、足つきクラゲ。


空には浮かばず……。

一緒に見た、水槽の中を泳ぐ、クラゲ…………?


--かわいい!!


胸が、詰まった。


それはきっと。
ミナの中の、カナタの思い出。


一緒に出かけた、あの日の出来事。


月にクラゲを思い出し、伝えようと言った、幼いなりの、大事な言葉。


カナタとミナの、二人の絆。


「そう、だったんだ……」


描かれていたのは、ずっとずっと、お月様で。


そして、今は……。


涙が、溢れた。


「ミナ」


儚げな笑顔が、カナタをとらえる。

柔らかく、小首を傾げて。
何も知らない、他人のふりして。


止まってなんか、いなかった。


忘れてなんか、いなかった。


ミナはちゃんと……。


「ありがとう」


しゃくりあげてしまいそうで……きちんと言葉にならない、想い。


カナタが耐えた、離れた時間。

ミナも、同じように耐えていたのだ。


ミナを想い泣いた夜。
ミナも、押し殺した心で、遠いカナタを想ってくれた。


月をクラゲに変えるほどに。

再会を喜んでくれていたのだ。


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