ひねもす月
……っう……っ


堪えきれず、嗚咽がもれた。


嬉しかった。猛烈に。


ミナが覚えていてくれたこと。

ミナの時が、今も静かに流れていること。


「う……っく……」


膝を抱えて、一生懸命、涙を堪えた。

こんな所で、泣いてはいけない。


強くなると心に誓った。

ミナを守るのが、カナタの役目。

だから、カナタは……。


--そ…………っ……


ふんわり、優しく、何かが触れた。


カナタの頭を、静かに撫でる。


「……っ」


びくりと、カナタの肩が揺れた。

迷うように振れたあと、その手の主に堪えきれずに、ぎゅっと抱きつく。


ミナは、カナタの方を見ないで。
手だけで、優しく慰め続ける。


見ていて、くれた--。


あんな、ダメなカナタのことを。

ミナはちゃんと、覚えているんだ……。


「ありがとう……」


途切れ途切れに言った言葉も、きっと、ミナには届いているはず。


今は、遠く思えていても--。



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