好きだなんて言えない。

――――
――――

「あーやっと終わったー…」


なんとか資料を運び終え
鞄を取りに教室のドアを開ける。



誰も居ない…。

あれ…そういえば
何で日向君一人だったんだろ

いつもは男子三人で帰ってるのに…
用事かな?



そんなことを考えて帰る準備をしていると
ふいにさっき陽菜が入ってきた方のドアが開いた


「…あれ?陽菜ちゃん?」

「…え?」

そういって振り返ると
一瀬君がドアの前に立っていた。


「まだ帰ってなかったんだ」

ピシャンとドアを閉め一瀬君が近づいてくる。



「…あ、うん…先生に頼まれちゃってて…。
一瀬君は?」

「瑞樹、委員会だったから待ってたんだけど用事出来たみたいでさ」

「そ、なんだ…」



“瑞樹”



一瀬君がそう呼ぶだけでも胸がちくりと痛む。



(そっか…)

瑞樹と一瀬君が付き合った日から、みんなバラバラで帰ることになったんだっけ…。
忘れてたや


「……」



なんだかいたたまれなくなって「私帰るね」
そう言おうと口を開いた時


「一緒に帰ろっか」


―……え……?



少し驚いて一瀬君を見ると一瀬君は続けた。


「用事済んだんでしょ?
帰んない?」

「……え、でも、み…」


みずき…


「…っ」

「帰ろ」


もう一度一瀬君を見ると
彼はにこっと笑って言った。


「………うん」








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