好きだなんて言えない。
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周りに誰もいない
静かな帰り道をふたりで歩く。
「……。」
ちらっと私より一歩手前を歩く一瀬君の背中を見上げる。
…なんだか恥ずかしくて隣を歩けない。
「陽菜ちゃん」
急に彼が振り向くから、視線が絡みあって心臓が大きく跳ね上がった。
「は…、はい…」
少し吃りながらも返すと
一瀬君は「はは、『はい』って…」と笑い、苦笑して言った。
「隣、おいで。」
「…え…っ、いや…あの」
「後ろにいちゃどっか行ってもわかんない」
「………」
一瀬君の言う通り
私は渋々彼の隣に移動する。
(どっかって…どこもいかないよ…)
一瀬君は
女の子の扱いがうますぎる。
今だって、さりげなく自分が通路側に来るように誘導したりとか…。
そんな彼の優しさが、
嬉しい反面
どこか苦しい…。