好きだなんて言えない。
「頭なんか撫でちゃってさー?」
「―ああ、これ?これは別に…」
「もう、浮気は駄目だかんね?」
瑞樹が冗談めかしに唇を尖らせる。
「馬鹿、しないよ」
――ああ
ここに居たくない
「……わ…私、先行くね…っ」
そう言って一瀬君の手を振り払うようにして脇をすり抜け、
後ろで驚いたように私の名前を呼ぶ瑞樹の声を無視して階段を駆け上がる。
―――慣れなきゃ。
教室付近の渡り廊下に着く。
――早く慣れてしまわなきゃ。
早く…
諦めなきゃ…。
教室の前まで来て
ドアに手をかけた時、
ドアがひとりでにガラッと開いた。