好きだなんて言えない。

――――――――


「…えーと、焼きそばパンにコーラ、オレンジジュース…。
そっちは買い終わった?」

「…あ、うんっ」


売店で頼まれた物を探している一瀬君に、なるべく不自然じゃないように返事を返す。


今まで二人だけで行動することなんてなかったから変に緊張してしまう。


「ははっ、陽菜ちゃん自分の忘れてる」

「へっ?あっほんとだっ」


そう言って売店を見回した瞬間
目の前にパンが差し出された。



「……え…?」

「これでしょ?」


目の前にあるのは
わたしがいつも食べているメロンパン。


「…ぁ、…ありがとう…」




知っててくれてたんだ……。


そりゃ毎日一緒に居たら嫌でも覚えちゃうかもだけど
そんなのどうでもよくなるくらい
すごく嬉しい。




思わずメロンパンを抱きしめた。


「それじゃいこっか」


全て買い終え一瀬君が言った。


「うん」


そこから屋上までの間
たわいもない話をした。



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