お兄ちゃんが、見てる。[短51P]

「トオルくん!!」



 数ヶ月前から音信普通だったトオルくんが、下を向きながら歩いている。


「亜季!?」


 トオルくんはあたしに気が付くと、驚愕の表情を浮かべてピタリと止まった。


 あたしが思わず腕を掴もうとすると――。


「く、来るな……!!」


 トオルくんが目を見開いてあたしとの距離を保つように、後ずさりした。


「トオルくん……?」


 トオルくんは怯えた顔をして、あたしの顔と周りを交互に見ている。

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