お兄ちゃんが、見てる。[短51P]
「亜季、悪いけど、用事ができた。もう帰ってくれる?」
タケシくんは、少しも悪いと思ってなさそうな顔で、あたしの服を拾い集めた。
「また、なの……?」
だって、前回も、前々回も、その前だって、このパターンだったじゃない?
まだ来てから一時間も経ってない。
「仕事なんだよ」
だって、タケシくんの会社、完全土日休みじゃん。
向こうの部屋で、携帯の相手と嬉しそうに話してるの、聞こえてたんだよ?
――浮気……?
ノロノロと着替えると、タケシくんがせかすようにバッグを持たせ、玄関まで送ってくれた。
そんなに帰って欲しいの……?