Paradise Jack
prologue
『Hey!レイジ』
休憩中、そう声を掛けてきたのは、現在ここハリウッドで撮影されている映画で、共演することになったラリーだった。
まだたった二度目の撮影で、彼とはほぼ初対面だというのに、俺の肩に手を回したりとずいぶん馴れ馴れしい。人生の半分近くをこの異国で過ごしているくせに、こういう文化にいまだ馴染めずにいる。
『調子はどうだ。あっちこっち引っ張りダコで、少し痩せたんじゃないか?』
ラリーは、俺の肩をしっかりと組んだまま、大声で喋る。特注しているというキツイ香水に思わず顔を顰めた。
『こないだの、"日曜日のレモンライム"だっけ?端役のくせに、お前ばっかり注目浴びていたよな』
『あれは、端とはいえ、役がよかったんだよ』
『はは、よく言う!』
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