Paradise Jack

彼は、わたしが短大を卒業して、やっとのことで就職した会社を6ヶ月でクビになった雨の日に、偶然出会った男の子だった。(なにが原因だったかなんて、そんなつまらないことはもう記憶にない)


冷たい雨が降りしきる公園には、無心で息をするわたしと、無表情のまま雨と涙で頬を濡らす彼だけがいた。

何時間、そうしていただろうか。

2つあるベンチにそれぞれが座って、じわじわと冷え切っていく感覚さえ徐々に失いながらただぼんやりと鼠色の空を見上げる。



「苦しいなあ」



不意に。

ぽつりと、彼が呟くのが雨音に混じって響く。それに、思わず目を見開いた。この息苦しさを、この子はもしかして知っているのだろうか。


そんなことを思った。


「酸素が足りないんじゃないの」


呟きに、思わずそんな言葉を返していた。

それが始まりだった。

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