Paradise Jack
そう問えば、"ちょっと外で煙草吸ってた"と、煙の匂いなんて少しもしないのにそんな嘘を言う。
近頃のわたしたちは、なにも変わっていないようでいて、少しの変化が見え隠れしている。
ナナは、以前よりも外出することが多くなった。
行き先は勿論知らない。
けれど、たとえばわたしが原稿用紙に向かっている間だとか、居眠りをしているほんの数時間の間にふらりといなくなり、また何事もなかったかのように戻ってくるのだ。
「好きな子とか出来たんなら、遠慮しないでいつでも出て行って構わないんだからね」
プレイヤーからDVDを取り出して仕舞いながら言う。
真っ赤なロングマフラーに2人でくるまっているパッケージは、既視感たっぷりで思わず眉を寄せた。
この2人が出会う時点で居眠りし始めた為に詳細は分からないが、おそらく内容としては、クリスマスになると決まって公開されるようなアメリカン・ラブストーリーで間違いないだろう。