Paradise Jack
ナナは食事だけでなく、本や映画も雑食だ。
カサブランカ、気狂いピエロ、更にはB級っぽいラブコメまで…。
年代もジャンルもまったくばらばらだ。
とにかく手当たり次第に買ってくるので、時折とんでもない作品と出会うことがしばしばある。
今回のは、まさにソレに当たるなと思った。
「そんな"くだらない理由"で、俺がこの部屋を出て行くわけないでしょ。見縊らないでよね」
「みくびるって、どういう意味」
「それだけ、俺にとってシュウのいるこの部屋はパラダイスってこと」
口元に薄い笑みを浮かべたまま、わたしはナナの腕の中に閉じ込められて、まるで小鳥が啄むようなキスをされる。
―…ほんとうにどうしようもない子。
ナナは、すぐに逃げる。
その小奇麗な顔に笑みを浮かべて軽口を叩き、どこで覚えたのか身体を重ねることで相手にそれ以上、心のいちばん無防備なところに踏み込ませない術をもつ。
服の間から侵入を試みているナナの手をそっと制して、ゆっくりと立ち上がる。ブラシで、伸ばしっぱなしの髪の毛を適当に梳いて、荒れた唇にリップクリームを塗った。
「どっかいくの?」
「図書館。ここだと、ナナが邪魔してくるから」
「酷いなぁ、シュウだって結局拒まない癖に」