Paradise Jack
ナナは、この部屋にひとつある大きな窓から、じっと外を眺めていた。わたしが帰ってきたのにも気づかない。何か考え事をしているようだ。
後ろから驚かしてやろうか悩んでいれば、そんな不穏な空気を察したのかナナがこちらを振り向いた。
「…あれ、帰ったんだ。て、うわ、シュウ。どうしたの、その格好!」
「転んだ」
「膝、血ぃ出てる!はやく消毒しないと」
「いいよ、そんなの。舐めとけば直るから」
「シュウ、それは迷信だよ。ちゃんと洗って、」
「…ナナ!」
声音を強めた呼びかけに、ナナが口を噤む。そして、鞄の中から取り出した雑誌を見て、その薄茶色の瞳を大きく見開いた。
その反応に思わず溜息を漏らす。
「どういうこと」
「…シュウ、なんで」
「図書館で偶然見つけた」
わたしは、雑誌を捲って、突き出す。