Paradise Jack
いつだって、なんでも上手に誤魔化すナナが、目に見えて狼狽している。言葉に詰まった様子で、ただ開かれた雑誌に視線を落としていた。
「まさか、シュウがこれを見るなんて思わなかった」
「…ナナ、写真好きなの?」
「うん。好きだよ」
ナナの顔が綻んだ。
この子が、こんな風に笑うのを、わたしは初めて見る。
いつだってどこか大人びた様子でいるくせに、今は好きなものを好きだというただの少年のようだった。
そんなに好きなくせに、わたしには何ひとつ教えてくれなかったのね。そう拗ねるのはおかしい。怒るのも間違い。わたしだって、同じだったのだから。
この部屋で、ナナと過ごすまっさらな時間に、"わたし"という不純を交えたくなかった。彼もそうであるのだと、言葉はなしに理解している。
何も生み出さないけれど、何も奪わない。
わたしは、これまでに色々と落としてきたから、その関係は何より望んだものだった。
だからこそ、それが永遠でないということも理解していたのだ。