Paradise Jack







"親愛なるシュウへ"





最後の最後まで、どういう顔をしてシュウとさよならをすればいいか悩んだけれど、結局、寂しいと泣くのも大好きだよと言ってキスをするのもおかしい気がして。

ベタだなあと思いつつもこうして筆をとっている次第です。

手紙なんて初めて書くので、多少文章がおかしいところは、素人だからということで見逃してもらえると助かります。


シュウと出会ったのは、土砂降りの雨の日だったね。
馬鹿みたいに2人で、まるで我慢比べみたいに雨に打たれながら公園のベンチに座っていたっけ。

詳しい事情は書けないけど、1年とちょっと前のあの日、俺はとても苦しかった。自分の居場所が見つけられなくて、子供染みた意地と変えられない現実とに苛まれて。

そんなときに、シュウと出会えて、そして今日まであの部屋で過ごせたことは、俺の今までとこれからの人生で一番の幸運だと、今この手紙を書きながら信じずにはいられない。


俺にとって、シュウと暮らしたこの時間は、何にも変えがたいもので。
まるで人生のモラトリアムのように、波風の立たない穏やかな海を漂うような、そんな居心地のよさだった。

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