Paradise Jack


だからこそ、いつまでも一緒にいられないということも理解していたし、おそらくシュウは、最初からそう思っていたのかな。

俺は、息の出来る場所をずっと探していたんだ。
シュウはそれを、いつも必死に小説の中に見つけようとしていたよね。けれど、シュウのつくる世界が、決して自己満足で終われるものじゃないって俺には最初からわかってたよ。


あの部屋に訪れる変化が恐ろしかった。
同時に、シュウの才能が開花するのを、もしかして押し留めているのは俺なのではないかと、そう考えるのはもっと恐ろしかった。


だから、"夜明けの銀"が小説のプロの目に留まったのは最高に寂しくて、そして最高に嬉しかった。俺なんかが少し邪魔した程度では、"小林秀宇"の才能は埋もれたりしない。

そう確信出来たから。


シュウが、自分の作り出す世界に没頭するその背中をずっと見てきた。
お陰で俺も、ようやくそれをする決心がついたんだ。


< 133 / 193 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop