Paradise Jack
「…男の子って、勝手だなぁ」
手紙に向かって独り言ちた。
真っ赤なリボンをほどき、開けた包みのなかには華の刻印が美しい瑠璃色の万年筆が入っていた。手にとって翳してみる。
金色の縁取りが、春の日を受けてきらりと光った。
ソファに寝転がりながら、暫らくそれを眺める。
担当者から、次回作を視野に入れて作品をあげろと言われていることを少し思い出したけれど、なぜか少しも原稿に向かう気が起きなかった。
…だるい。
春のせいか。
勝手な理由をつけて、ナナに貰った万年筆をサイドテーブルに置いた。