Paradise Jack


内に溜まる感情を、吐き出す術(すべ)をわたしはこの方法しか知らないのだ。
ゆっくりと身体を起こしたとき、電話のベルが鳴る。


のそのそとベッドを這いながら、12コール目で電話に出る。
もしもし、そう蚊のなくような声で呟けば、受話器のむこうで小さく息を呑む音が聞こえた。




『…小林、秀宇さんのお宅でしょうか』


「えーっと、…はい、あの…、あなたは」




若い男の声だった。
ナナよりは少し、固さのある声音。



『よかった!突然のお電話で申し訳ございません。私、"星とヒバリ社"で編集担当をしております…、』



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