Paradise Jack
耳がおかしくなるような騒音と、思わず目を細めてしまう光の交差に溜息をついた。持っていたカクテルを一気に飲み干してカウンターへ置く。
身を隠す桜海町からタクシーで40分程走らせた場所は、渡米するまでよく飲みに行ったクラブだった。
銀燦楼(ぎんさんろう)と呼ばれる都心の一角は、高級クラブや会員制のバーが立ち並ぶ。夜になると金を持て余した業界の人間や著名人が街を歩き、それぞれの馴染みの店へと消えてゆくのだ。
「お客さま、あちらの方からです」
バーテンダーに、一杯のカクテルが差し出された。
淡緑色のそれはおそらくギムレットだろう。
こんなに強い酒を差し出す人間の顔をちらりと見る。
そこには、いかにも女好きそうな笑みを浮かべる男がこちらに小さく手を振った。今夜はこいつでいいか。そんなことを思いながらそっと笑みを浮かべてカクテルに口をつけた。