Paradise Jack
一呼吸置いて、言葉を待つ木本をゆっくりと見上げた。
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アパルトマンの一室で、まるで引きこもりのような生活をして2週間。
宅配レンタルで毎日のようにDVDを注文し、届くそれをただひたすらに見続けた。
映画界にその名を残す、名女優達の立ち振る舞い、言葉遣い、そのひとつひとつを目に焼きつけ、飲み込んでいく。
(その中には、一度セックスをしたことのあるオリビア・ウッドまでいて少々複雑な心地になったのだけど)
"『怜二、役をやるからには完璧じゃなきゃ駄目だ。お前自身を殺す努力をしろ。死に物狂いでな』"
恩師は、そんな無茶なことをいうハリウッド随一の名俳優だった。
彼の言葉は今でも俺の中にしっかりと刻みこまれている。こんな、屈辱的な事態にさえ、それを怠ることを許してはくれない。
―このまま、どうしようもなく惨めな思いに苛まれながら、二度と再起出来ないんじゃないか。
正体がバレてしまうかもしれないというリスクを背負いながらも、何か、少しでも、"演じるということ"に携わっていなければ、不安で仕方なかった。