Paradise Jack
マスターは、口元に笑みを浮かべるだけで何も言わなかった。
静かに、美しいブルーのカクテルを差し出す。何のカクテルかを問えば、これはオリジナルカクテルで、名前はまだないという。
「奢るよ。今日の出会いにね」
黙ったまま口をつけたそれは、静かな甘みが心地良い。
「マスター、わたしも怜と同じヤツ」
「小林さんはいい加減飲みすぎ。目の下にクマ作って、ちゃんと寝ているのかい」
「3時間程、昼寝したけど」
「これで我慢してくださいね」
差し出されたノンアルコールジュースに口を尖らすシュウが、そのままずりずりとテーブルに顔を埋める。
本当に、どれだけ酒を飲んだのか、シュウの顔は赤味を帯びていて、触ったら随分熱そうだ。
呆れて彼女を見下ろしていると、芹生がくすくす笑う。
「先生って面白いよね」
「…変人の間違いだろ」